2023/3/24 日記

 

向かう道の輪郭が明瞭になると、部屋が綺麗になることに驚いた。

行き先を。大人を喜ばせるためではなく、嘘偽りない自らの声のために他者へ伝えるときの、緊張、恐怖、奮起。物分かりの良い優等生の間は、柔らかな新芽によく似た声を、できる限り踏み潰した。運動部に入れたら、美大に行けたら、予備校に通えたら、数多のたらればを嘲笑しながら10代を歩んだ。境遇から投影された自己をまた自らで凝り固め、非力さに失望しながら強かに生きた。それがどうだ、今や自意識の統合に失敗したまま成人してしまった事実に怯えて過ごす。怒りや悲しみが過去になった者は、温い空気に包まれ窒息していく。ナニカに腹を立て、ナニカを赦せないまま踠くのが関の山。

 

振り返れば、学芸員課程は走り切れないとお利口な判断をして一度見送った。しかし、申し込み期限後に押し寄せた後悔の念だけを盾に教授へ連絡し、厚かましくも拾っていただいた。運の良さを味方にして、実習を含めた全ての単位を取得し終わった。諦めたはずの心理学も、追加で概論や総論を履修し、恵まれたカリキュラムの元で二足の草鞋を履く度に、いつまでもこの分野に携わっていたいと思うようになった。横切るチャンスを見つけるたび、これまでの憂さ晴らしをするかのように、中途半端を覚悟の上で手を出しては危うい自転車操業を続けた。結果、22歳目前の選択に、3年間全てが寄与してくれたね、という感覚がある。

願ってもいなかったが、追加特典として目指したい職業の道までもが現実的な半径に浮かび上がった。インナーチャイルドをあやしながら、弱腰にならず突き進めればと願い、今は履修を組む。